悪性リンパ腫の標準治療は行う前提で、その他考慮すべきこと。
悪性リンパ腫は抗がん剤治療がよく効く腫瘍として知られています。よって必ず標準治療は受ける必要があります。
国立がん研究センター リンパ腫の治療について
https://www.ncc.go.jp/jp/information/knowledge/Lymphoma/003/index.html
標準治療を受けた上で、付加的に、臨床的証拠(エビデンス)は無いが、副作用があまりなく、高価でも無く、もしかしたらプラスになる可能性のあるものを紹介します。行う場合は、必ず主治医に報告・相談して行って下さい。高額で怪しい民間療法や代替療法よりずっと科学的ではあると思います。繰り返しますが、標準治療(抗がん剤治療など)の代わりになるほどの効果は全く期待出来ませんので、必ず標準治療(抗がん剤治療など)は受けて下さい。
【NF-kB】
「悪性リンパ腫を特徴づける2つの分子病態は、NF-kB経路の異常活性化と解糖系亢進である。」
https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K17826/
NF-kBとは?
細胞の核の中で遺伝子に働くタンパク質で、炎症や細胞死(アポトーシス)に関わります。NF-kBが活性化すると炎症を起こし、細胞(がん細胞含む)が死ななくなります。NF-κBは”健康”に必須、でも”がん”でも活躍します。悪性リンパ腫では関りが強いとされています。
http://shushoku-signal.umin.jp/info/high/inoue.html
何がNF-kBを活性化してしまうかというと、TNF -αなどの炎症性物質です。TNFαは様々な感染症による炎症、過度の紫外線、ストレス、ワクチン接種による炎症でも上昇します。よって、悪性リンパ腫では、これらは注意が必要ということになります。なお、NF-kBは悪性リンパ腫だけでなく多くのガンで活性化が認められるので、ストレスや炎症はなるべく避けるべきです。呼吸器感染症から身を守るには、人ごみやマスクなしでの会食を避ける、人ごみではN95マスクをつけることが有効です。N95マスクでも息苦しく無いものはあります。mRNAワクチンも強い炎症反応を起こしますので、必要性と天秤にかけて考慮して下さい。
悪性リンパ腫でNF-kBを抑える薬は認可されてないのですか?
されています。但し、限られたタイプの悪性リンパ腫に対して保険適用があります。
イブルチニブ:小リンパ球性リンパ腫、 マントル細胞リンパ腫、 リンパ形質細胞リンパ腫
チラブルチニブ:中枢神経原発リンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫
アカラブルチニブ:小リンパ球性リンパ腫
ボルテゾミブ:リンパ形質細胞リンパ腫
身近な薬でNF-kBを抑える薬は無いですか?
有ります。代表的なものはプレドニゾロンやアスピリンです。プレドニゾロン(ステロイド)は悪性リンパ腫の代表的治療であるCHOP療法に含まれています(Pの頭文字)が、免疫全般を落としてしまうので長期的投与は困難です。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/fpj/118/3/118_3_197/_pdf/-char/ja
【アスピリン(アセチルサリチル酸)】
アスピリンを常用している人は悪性リンパ腫の発症率が低いという報告が多いようです。
但し、アスピリンの悪性リンパ腫発症後に対する臨床的エビデンスはありません。アスピリンは出血を起こしやすくする作用がありますので、決して自己判断では服用しないように、必ず主治医に許可を取ってから服用してください。アスピリンがNF-kBを抑制することが分かっていることを考え合わせると、下記の研究の傾向を見ると、アスピリンは悪性リンパ腫に対して、負の影響より、有利な影響があるように思います。但し濾胞性リンパ腫に限り、負の報告が2つありますので、避けた方が良いかもしれません。また、もし飲むなら、量としては、メイヨクリニックの研究を見ると、81mg/日(低用量)が好ましいのかも知れません(市販のバファリンAは1錠アスピリン330mgです)。しかし、少なくとも、承認されている治療薬に比べればNF-kBを抑制する力は弱く、発症後に服用して再発率に差があるか、生存率の向上があるかは、研究結果を待たないと分かりません。
【疫学調査】
・米国メイヨクリニックの研究では、低用量(162mg/日以下)アスピリンを常用している人は非ホジキンリンパ腫発症のリスクが0.82倍(女性では0.71倍)であった。びまん性大細胞型B細胞リンパ腫は0.74倍、濾胞性リンパ腫では0.79倍、慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫では差が無かった。
高用量(163mg/日以上)では効果は認められなかった。
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/ijc.33541
・アスピリンの常用は男性のみ非ホジキンリンパ腫発症のリスクが0.82倍、女性では差が無かったという研究。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15947882/
・アスピリンの常用は女性の非ホジキンリンパ腫発症のリスクに影響を与えないという結果。(濾胞性リンパ腫に限り逆にリスクが高かった)
・低用量アスピリンを7年以上常用している人は殆ど服用しなかった人に比べて、ホジキンリンパ腫発症のリスクが0.65倍であったが統計学的に有意とは言えなかったとする研究。
https://www.nature.com/articles/bjc2011443
・アスピリンの常用者はホジキンリンパ腫発症のリスクが0.6倍という研究。
https://academic.oup.com/jnci/article/96/4/305/2606712
・調査時点でアスピリンを常用している人は非ホジキンリンパ腫発症のリスクが逆に高かった(1.26倍)が、長期常用者では差が無かった。濾胞性リンパ腫に限り長期常用者では逆に1.76倍非ホジキンリンパ腫発症リスクが高かったという研究。
・アスピリンを5年以上常用している人はリンパ腫全体の発症のリスクが0.5倍という報告。
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1047279723001163
【動物・試験管での実験】
・NK/T細胞リンパ腫はEBウイルスが関与する悪性リンパ腫ですが、マウス生体および試験管内において、アスピリンは、NK/T細胞リンパ腫を抑制しました。この研究ではアスピリンが弱いながらEBウイルスも抑制したとあります。
https://www.frontiersin.org/journals/oncology/articles/10.3389/fonc.2018.00679/full
・アスピリンはNF-kBを抑制することで、試験管で、EBウイルスに感染した細胞を細胞死に誘導したという報告があります。(EBウイルスが関係する悪性リンパ腫もあります)
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0014299908003907?via%3Dihub
何故アスピリンの悪性リンパ腫に対する臨床試験が無いのですか?
分かりません。考えられる理由の一つは、抗がん剤治療では血小板減少が起こり、出血しやすい状態になってしまうことが挙げられます。アスピリンは血小板の機能を抑えてしまうので(血をサラサラにする目的で飲まれます)、血小板が減っている人が服用すると、頭蓋内出血など重篤な副作用が起こる可能性があります。よって、抗がん剤治療と組み合わせることが困難です。抗がん剤治療から時間が経って、血小板が正常な値に戻っている状態であれば、アスピリンは主治医の許可を得れば服用することが出来るかもしれません。アスピリンの抗血小板作用は、服用を辞めてから1週間は持続しますので注意が必要です。血小板が正常な寛解期に、アスピリンを服用して、再発率の差を見たり、生存率の向上を調査するような研究は行う価値はあると、私は思います。
【他のNF-kBを抑制する天然化合物】
含まれる食品の例を付記しますが、サプリメントなどの形でないと十分な量は接種できないかもしれません。また作用は弱いものだと思われます。多くは抗酸化サプリと呼ばれるものです。
レズベラトール(resvertol 赤ワイン)※但しアルコールは炎症を起こすので避けてください。摂るならサプリメントで。
ケルセチン(Quercetin 玉ねぎなど)
ルチン(Rutin ビタミンP 蕎麦など)
ルテオリン(Luteolin ピーマン、セロリ、人参など)
クルクミン(Curcumin うこん、ターメリック)
CAPE(Caffeic acid phenethyl ester プロポリス)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/fpj/118/3/118_3_197/_pdf/-char/ja
グリチルリチン(Glycyrrhizin 甘草、漢方薬に使われる)処方薬の錠剤があります。主治医に希望すれば出してくれる可能性はあります。副作用として高血圧や低カリウム血症に注意が必要ですが危険な薬ではありません)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24386942/
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29763588/
https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=201802288441965725
セファランチン(Cepharanthine ツヅラフジ科植物のタマサキツヅラフジは、 台湾の標高700mの山地に自生し、古くから原住民により蛇咬傷時の民間薬として珍重されていた。)
処方薬の錠剤があります。主治医に希望すれば出してくれる可能性はあります。円形脱毛症や白血球減少症に保険適応があります。
https://www.kakenshoyaku.com/product/cepharanthin.html
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20334881/
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/j.1349-7006.2010.01572.x
【疫学調査】
384人の悪性リンパ腫患者を追跡したところ、飲酒は生存率の低下に、コーヒーや紅茶は生存率の向上に関連していたという報告があります。飲酒は炎症を起こしますし、飲酒をする人はより多くのストレスを抱えていたのかも知れません。コーヒーや紅茶は(紅茶の方が生存率向上の関連性が強い)はTNF -αを抑える効果が知られているので、結果的にNF-kBも抑えられて生存率の向上の関連性が見られたのかも知れません。
【ラクトフェリン】
ラクトフェリンというヒトの母乳や牛乳に含まれる物質が、試験管の実験で、悪性リンパ腫を抑制する作用も報告されています。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20171209/
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/9781371/
臨床エビデンスはありませんが、サプリメントとして販売されているように、全く副作用が無いので、標準治療に加えて付加する価値はあると思います。Iherbなどのアメリカのサプリ通販サイトで1錠あたり100円ほどで購入可能です。
試験管実験では抗EBウイルス作用を持ちますので、EBウイルスに関連の有る悪性リンパ腫には有望かもしれません。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6741539/
https://europepmc.org/article/med/25068657
【腸内細菌】
食物繊維の豊富な食事と腸内の酪酸菌による酪酸が悪性リンパ腫に抑制的に働くという動物実験や試験管での報告があります。
https://www.tandfonline.com/doi/full/10.3109/10428194.2016.1144879
https://journals.sagepub.com/doi/full/10.1177/11795549211024197
腸内の酪酸菌はTNF -αを抑える効果が知られているので、結果的にNF-kBも抑えられて悪性リンパ腫に抑制的に働くようです。
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1931312822003493
腸内の酪酸菌を増やすためには、特に水溶性食物繊維をとる必要があります。酪酸菌を特に増やす効果がある水溶性食物繊維は、グアー豆由来のもの、
https://www.taiyo-labo.jp/products/list?category_id=11
イヌリン、難消化性デキストリン(イージーファイバーなど多数商品あり)です。難消化性デキストリン15g+サンファイバー15gなど組み合わせも可能です。種類によって合う、合わない(下痢など)があるので少量より各種試すことをお勧めいたします。
毎食の食物繊維に加えて、毎食の酪酸菌自体も摂取することをおすすめします。酪酸菌製剤は強ミヤリサン錠という商品目でドラッグストアで売っていますし、処方薬でもミヤBMという名前であります。
水溶性食物繊維に加えて、不溶性食物繊維が豊富でルテオリンも含まれる生のニンジンやセロリのサラダ、また、免疫を強化するとも言われている舞茸なども積極的に取ると良いかもしれません。